音は色、色は光 1
2017/05/30

作曲納品を終えて、卓上スタジオの装置を点検。納品前はOSやソフトをアップデートしないし、ハード類も正常に鳴っているうちは万が一の不具合にならぬよう弄らない。<I/O・オーディオインターフェイス>という物がある。デジタルで保存されている音をアナログに変換する役目をする機械(その逆も)。スマホ、ノートパソコンにも超小型のそれが搭載されていて私達は実際の音として聴くことができる。デジタル化されたデータを如何に良いアナログ音に戻すかはこのI/Oの性能に関わっている。デジタルオーディオの心臓であるこの部分に、私は13〜4年前から同じ機器を使い続けている。昭和のオーディオアンプと同じほどの大きさがある。荒っぽさも残る太い音。LP、磁気テープ、そしてライブで鍛えられた耳には合うようだ。OSのバージョンアップはもちろん別のPCで実験してからだが、でもやはり怖々と最新にして、しかしI/OをPCに認識させるドライバソフトは最新のものでは動作しなかったので、OS最新版には公式非対応とある少し古いバージョンにしたら、なんと鳴った。特に海外製品は、古い型番やそのユーザの切り捨てが非情なまでだが、やってみるとこうして作動することもある。OSへのダメージも懸念されたがどうやら大丈夫そうだ。そして巷の民生機器では聴けない太く暖かい音になった。買ったことはないが価値ある骨董品を見つけたり、こちらは良くある廃物利用に成功した気分現代版だ。

一つ満足を得ると次の事が気になる。I/Oからミキサーに繋ぐオーディオケーブル、長さがちょうど良かったので10年ぐらい経つ物を使っていた。OFC無酸素銅ケーブルの時代になって電導部分の劣化は遅くなったとは言え、10年はもう古い。3m/1,000円以下でも買える時代だが、少しだけ良い物に換えると、失われた時を取り戻したかのような滑らかで張りのある音になった。いや本当はもっと下品に「ああ今まで損した…」と思ったのである。

ミキサーと、I/O、CD、LPなどをそれぞれ繋ぐケーブルを新しい物に交換し終えて、PCの中に入れてある音楽ファイルとCDとの音質差を久しぶりに比べてみた。CDを1としたらPC側は0.22ぐらいのサイズに圧縮してあるファイル、CDの四分の一弱、情報として、スマホに入れて持ち出し用としてであれば十分な音質を保てるサイズだ。そしてもはやこの音質に耳慣れているから恐い。

PC内の圧縮された音楽ファイルを聴く。配線周りを新調したせいもあって感触は悪くない。しかしCDと比べてみるとそれは明らかに違った。CDは更に艶やかに、豊に、バランスも良い。密度の濃い音つまり良い音を聴いたときは、心穏やかに、興奮し、景色は広がる。日常眠っているものが覚醒され、新しい物が与えられる。普段はデータを軽くするためにこれらを捨てているのだ。(LPの音質に関してはここでは横に置く)

写真も手軽に均一に扱えるようになり、その恩恵に与った生活をしているが、紙焼き写真を知ってしまった幸か不幸か、心揺さぶられる迄には至らない。

現代の私達は、切り取られ、圧縮された情報を見聞きし感情を抱く。その振幅の足り無さと、間引きされた荒さは、日々の言葉遣い、態度、仕種にも影響してはいないか。