人は嘘をつく。私利私欲のため、生きるため、時には人のためにも。どれだけついてきたか、私も。そんな中できるだけつかないようにしている場所がある。演奏の場だ。若い頃はたくさんついていた。それこそその瞬間を生きのびるために。音楽での嘘、一言で言えばそれは「思っていないことを弾く」ということだと思う。演奏はそのモチベーションを保つのがなかなか難しい。どこかに到達してもすぐにまた薄れる。常に新鮮じゃないと生まれてこない動機。しかし技術に頼ったり、常套句を引用したり、動機が薄いときでも音は出せる。聴くときはこのことにだまされてはいけない。良い演奏者は欲を満たすために必死になって音を出す、その時音と同時に「呼吸」「気配」「意識」なども伝わっていく。聴衆は音だけで判断しているのではなく、演奏者からあふれ出る目に見えない音にも聞こえないエネルギーを感じて総合的に判断する。この動機に裏付けされた音楽が初めて人の心に届き残る。日常、気もそぞろな返答はすぐにばれる。うかうかしていられない。
(2004/11/28 HIROKI MUSIC SCHOOL CONCERT PROGRAMより)